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製作の共通事項

製作に共通する基本的事項です。

基本部材の加工のふたつの方法

   A 硬質塩化ビニール板の場合

    Aの硬質塩化ビニール板を使った場合は、材料も少なく作業も簡単ですが、つなぎの部分にすき間ができたり、微妙な曲線の加工ができないない等の難点があります。

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   B 厚紙のレジン処理の場合

    Bの厚紙をレジンで硬化処理する場合は、材料等が多く手間がかかりますが、微妙な曲線等の加工が可能です。

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▼ 以下 各々の方法の説明です。

A:硬質塩化ビニール板の加工方法

    型紙や定規にあわせ、ユニポスカで線を書き込みます。

    ユニポスカは、あとでスポンジでこすれば洗い流せます。

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    はさみで切ります。

    切り口はぎざぎざしているので、#240~320のサンドペーペーで整えます。

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    穴をあける位置にマーカーで印をつけます。

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    板に置いて、ドリルで穴をあけます。新聞紙や雑誌等の上では穴が歪みます。

    穴の直径は7~8mm幅平紐で2.5~2.8mm、9~10mm幅平紐で2.8~3.0mmですが、威しに使用する平紐の材質によって異なるので、不要な塩ビ板で試します。

適正な穴径のイメージです。

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    穴があいたら、お湯でゆっくりと曲げます。

    板曲げてから、マーカーや穴あけ時のほこりなどを洗い落とします。

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    甲冑の兜のしころや袖、草摺などの板部材の上部は、強度確保と擦れた紐が傷まないように先端2mm程度が曲げてあるので、この表現加工を行います。

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    硬質塩化ビニール板は曲げられないので、上端部に1mmのコードを瞬間接着材で接着し、パテで埋めてサンドペーパーで平滑になるよう磨きます。

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    裏面につや消しのスプレー塗料を吹き付けます。

    表面につやありのスプレー塗料の吹き付け、または人工うるしを塗装します。
    人工うるしで塗装するときは、後で漆が剥離することがあるので、表面を#1000程度のサンドペーパーで磨き、表面をザラつかせてから塗装します。

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B:厚紙のレジン処理方法

    厚紙に液体レジンの浸透処理を行うと、プラスチックのように適度な柔軟性を持った硬化ができます(画像はウェーブレジンキャストEXです)。

    厚紙は、同じものを2枚を重ねて接着し、成形してから液体レジンの処理を行います。
    レジン処理を行なった後は、ドライヤー等で少しの修正はできますが、大きな修正整形はできません。

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    紙の部材は、型紙などにあわせて切り抜き、木工ボンドで張り合わせます。

    曲げた紙を張り合わせると端部がずれるので、はさみで切りそろえます。

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    張り合わせた端部が開いていれば、液体瞬間で補強します。

    端部は必要に応じてパテなどで整形します。

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    使い捨てのプラスチックカップに液体レジンのA液とB液を等量に入れてよくかき混ぜます。

    すぐに固まるので少しづつ調合し、以降の作業も素早く行います。

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    整形した部材の裏表に、大きめの古い筆等でレジンの混合液を刷り込むように塗ります。

    別のプラスチックカップにラッカーシンナーを入れておき、一工程ずつに洗います。こうしないと、すぐに筆が固まります。

    レジンが硬化したら、#240~400番のサンドペーパーで表面を削ってなめらかにします。

    穴はレザーパンチであけます。穴の直径は7~8mm幅平紐で2.5~2.8mm、9~10mm幅平紐で2.8~3.0mmですが、威しに使用する平紐の材質によって異なるので、切れ端で試します。

適正な穴径のイメージです。

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サンディングシーラーの処理

    レジン処理を行わない厚紙等の部材は、そのまま塗装すると塗料が浸透するので、サンディングシーラーを塗り、サンドペーパーで磨いてから塗装します。

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部材をつなぐ=威す

    板材を威糸で縫うことを「威す」(おどす)と言い、この組み合わせは「下段の板が手前」が基本です。

    これは兜のしころや大袖、草摺はもちろん、胴の部材の組み合わせも同様です。

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    上の例外として、膝を守る佩楯(はいだて)だけは「下段の板が後ろ」となります。

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    平紐を「威糸」と言います。また、威糸を穴に通して縫うことを「威す」と言いますが、これは「緒を通す」が語源だと言われています。

    画像の大袖の赤色の威糸の威し方は、当世具足などで用いられる「素掛威」(すがけおどし)と呼ばれるシンプルな威し方です。
    両端と下方の柄のある威糸を「耳糸」(みみいと)、いちばん下に横に並んでいる橙色の威糸を「菱縫」(ひしぬい)と言います。

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    こちらは「毛引威」と呼ばれる全面的な威し方を表現したものです(手づくり甲冑「雲」)。

    両端の耳糸の色は基本色と同じとし、菱縫は2段としています。
    毛引威の表現は下記で説明している揺糸の威し方の応用です。

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    胴と草摺も威糸でつなぎます。この威を「揺」(ゆるぎ)と言います。

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参考

絵革の製作

    当世具足に絵革はあまり使われませんが、使うときには、正しい絵柄を使います。

    絵革は鹿の皮ですが「バイリーンクリエイト社」の特殊紙がこの風合いなので、この特殊紙にパソコンで絵革の柄をプリントアウトしての使用が手づくり甲冑に適しています。
    かつてはネット通販で購入できましたが、現在は店舗在庫のみのようです。あれば早めに入手を。

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部品/部材の複製

    百円ショップ等で入手できる「おゆまる」等のお湯で軟化する素材で他の甲冑の部品/部材などから型を取り、レジンを流し込んで硬化させると、簡単に複製ができます。

    八幡座や八双金物の複製に最適です。

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甲冑づくり全体の参考

    Anthony J. Bryant氏が公開されているWebサイト An Online Japanese Armour Manual がすばらしい内容なので、参考にさせていただいてください。

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