胴をつくる
当世具足の桶側胴をつくります。
- 桶側胴(おけがわどう)は、長い鉄板をつないだ前胴と後胴を脇で引き合わせて着用する形式の胴です。
画像は硬質塩化ビニール板でつくった手づくり甲冑 地 の胴です。
胴のイメージと構成
- 実物の胴の下端部は直線ではありませんが、加工が複雑で、完成すれば見えないので直線としています。
胴本体をつくる
- 不要な厚紙や段ボール紙などで、画像のいずれかのような胴形の簡易仮型をつくります。
- 前記の胴のイラストの番号を参照に前胴の1~7の板と後胴の1~8の部分を写し取り、各々の板の上下の重ねしろが約25mm、前胴と後胴の重なりが約50mmになる帯状の部材をつくります。
- 型にあわせて切り取った前胴の下部分の型紙です。
桶形なので下方に行くに従って小さな弧形となっています。長さが???ですが、接着整形してから両端を切りそろえます。
- 帯状の部材の重ねしろに接着剤を塗り、胴を樽型に成形します。
- レジン処理の場合は、貼り合わせ成形ができてから裏表にレジンの浸透処理を行います。
- 塩ビ板をつないだ後胴の成形です(下部を凹状としています)。
胴本体の完成をつくる
- 前胴の1の板の上部に、胸板の威糸を通す穴を2段であけます(標準寸法の場合7mm間隔42個/2段です)。
4の板の両端に脇板を威す威糸を通す穴をあけます(標準寸法の場合は左右とも7mm間隔16個/2段です)。
7の板に揺糸を通す穴をあけます(標準寸法の場合は7mm間隔66個/中心から左右33個ずつ。位置は下端から約40mmです。)
- 前胴の胸板をつくります。
重ねしろが25mmとなる胸板の部材を作り、重なりしろ線の上40mmの位置に7mm間隔42個の穴をあけます。
- 塩ビ板の胸板の場合は、赤線の部分に 3mmのビニール被覆コードを瞬間接着材で貼り付けてすき間にパテを埋め、固まったらサンドペーパーでみがきます。
厚紙をレジン処理する場合は、先端を前に折り曲げておいてからレジン処理を行います。
- 後胴の押付板をつくります。
重ねしろが80mmとなる押付板の部材をつくり、後胴の1の板の上部に接着します。
押付板は強度が必要なので、塩ビ板部材の場合は塩ビ板を2枚以上、厚紙のレジン処理部材の場合は厚紙を3枚以上重ねます。
- 後胴の1の板の上部に押付板を貫通させた7mm間隔48個/2段の穴をあけます。
5の板の左右にも7mm間隔16個/2段の穴をあけます。
7の板の下端から約40mmの位置に7mm間隔72個の穴をあけます。
- 肩上をつくります。
厚み2mm・幅30mmのアルミ板を約320mmに切断し、自分の肩の厚みに曲げます。
塩ビ板2枚を張り合わせた部材または厚紙2枚を張り合わせてレジン処理した部材をアルミ板の曲線に沿うように曲げ、これをボンドG-17でアルミ板に接着して肩上本体を2本つくります。
- 肩上本体と押付板が約80mm重なる位置に肩上本体をボンドG-17で接着し、さらに重なり部に各々4個の穴を通してボルトで固定します。
原寸にあわせて、塩ビシートまたは厚紙2枚を張り合わせてレジン処理した背板をつくり、端部処理を行って押付板にボルトまたはボンドG-17で固定します。
- 前胴と後胴の脇板をつくります(各2枚)。
この脇板も強度が必要なので、押付板と同様に厚みのある部材で重ねしろが25mmになる部材をつくります。
重なりしろ線の上約40mmの位置に、前胴と後胴の脇にあけた穴と同じ7mm間隔16個/2段の穴をあけ、赤線で示した部分の端部処理を行います。
- 塗装します。
胴などの大きな物の塗装は、こうした作業台を作ると塗装が楽です。
- 前胴の胸板と脇板の重ねしろを重ねて揺糸の要領で威します。
- 後胴の押付板の重ねしろを重ねて菱縫の要領で威します。
草摺をつくる
- 草摺をつくります。当世具足で一般的に用いられている
・前胴3間 5段下り 5条素掛威
・後胴4間 5段下り 4条素掛威
です。
- 草摺の部材は塩ビ板または厚紙のレジン処理によってつくり塗装します。
なお、すべての部材の上部と両端に端部加工を行いますが、各々の方法等はこれまでの説明のとおりであり、ここでは省略しています。
- 前胴と後胴に各々の草摺を揺糸でつなぎます。
揺糸の長さは80~100mm程度です。体型にあわせて長さを調整します。
紐等の取り付け
- 実寸や体型にあわせて間隔25mm径2.5mmの穴を2ヶ所あけます。
穴あけを終えたら肩の紐(高紐と言います)等を取り付けます。
合当理と待受の取り付け
- 背の旗印のさお(棒)を差し込む簡易な合当理(がったり)と待受を取り付けます。
合当理は、同じかたちの塩ビ板を3枚程度重ねて作成して塗装し、蝶番で後胴の上部に取り付けます。
- 水道管を切って塗装した待受を作成し、後胴の下部にボルトで固定します。
胴の絵柄
- 兜を頂く甲冑を着用する階級の武将は、背の旗印で「家」を示し、兜の前立で「武将」自身を示しました。
よって、稀に神仏等に関連する絵柄を胴に描いたものが見受けられても、家紋を描いたものはほとんど見当たりません。
つまり、胴に大きな家紋を描いてあるのは足軽用の簡易甲冑なので、武将用とするなら胴に家紋を描くのは???(✕!)ですからご留意を。